現在活躍しているプラントハンターに西畠清順さんがいます。西畠さんはプラントハンターの活動とも言える外国の植物を日本に持って帰ってきて、外国の珍しい植物を紹介したり、植物やご自身の活動についてのトークショーや植物をに関する本を書かれています。

現代のプラントハンターである西畠清順さんについて、西畠清順さんが手掛けた植物の事例を年ごとについて、またインタビューや書籍もいくつか紹介します。

西畠清順さんの活動2011年

小豆島 樹齢1000年オリーブ植樹

 

小豆島ヘルシーランドのシンボルツリーとして、樹齢1000年のオリーブを独自の知識と技術で輸入し、植樹を行いました。小豆島の人々だけでなく周囲に大きな影響を与え、その後メディア等に大きく取り上げられました。

 

西畠清順さんのプラントハンターとしての代表的な活動はここから始まったみたいです。

 

西畠清順さんの活動2012年

代々木VILLAGE by kurkku

 

代々木にある商業施設である。「共存」をテーマに、国境というボーダーを越えて世界各国を代表する植物が一同に集まり、都心で仲良く暮らすという唯一無二の植栽計画を行った。デザインに重きをおかず、それぞれの国の植物が互いに寄り添い暮らし、ひとつの森を形成している。様々な企業や映画、イベント、アーティストとのタイアップが頻繁に行われ、年間40万人を超える来園者が訪れる施設となっている。

 

「桜を見上げよう。」Sakura Project

 

震災から1年後の春、ルミネ有楽町にて都内一早い花見をしたいという依頼を受け挑んだプロジェクト。復興を祈願し、日本全国47都道府県すべてからサクラを集めて咲かせてほしいという前代未聞のミッションのもと、日本中の公共施設、寺院、個人、企業、植物園、大学等の協力を受け、サクラの枝を集めた。そして、それらすべての都道府県から集まったサクラをイベントの日にひとつの植木鉢に一緒に咲かせ、「日本はひとつ」と大きなメッセージを掲げることに成功した。

 

URBAN RESEARCH Store 東京スカイツリータウン・ソラマチ店

 

URBAN RESEARCH Store 東京スカイツリータウン・ソラマチ店の植栽をプロデュース。テラス植栽から室内の壁面まで大量に植物を用いることで、店内を有機的な空間へと変貌させた。

 

代官山アートストリート

 

エコカー路線で業界を切り開いていたトヨタ(TOYOTA)が、あえて一風変わった新型車・オーリスを代官山ヒルサイドテラスで発表した際に、コンセプトに見合った植物を一緒に発表したいというミッションのもと遂行されたプロジェクト。代官山アートストリートの一環で企画されたこの展示は、「常識に尻を向けろ」という強いコンセプトに見合う、水と土がなくても半年も生きる砂漠の植物・トックリランを提供し、テーマカラーの赤色で演出した。

               

渋谷ロフト リニューアルオープン

 

渋谷ロフトのリニューアルオープンのため、9月の初旬にモミジを紅葉させることに成功。デザイナーの大月勝弘氏ディレクションの元、「渋谷に届いたばかりの秋」のイメージを演出した。

震災復興のイベントから有名な店舗のプロデュースまでさまざまな活動が展開されています。このころからそら植物園という活動がはじまり、メディアでの露出も増えたようです。そら植物園とは、ひとの心に植物を植える"活動として西畠清順さんが立ち上げたものです。

 

西畠清順さんの活動2013年

おおさか創造千島財団レセプション

 

千島土地財団100周年記念イベントにて、アーティストの栗林隆氏がそら植物園のセレクトした植物を使いインスタレーションを披露。パーティ会場までの道のり30mにも及ぶ植物のトンネルを作り上げた。

 

瀬戸内国際芸術祭 大竹伸朗作・女根

 

世界から注目されるアーティストの大竹伸郎さんが、2013年の瀬戸内国際芸術祭で創作した“女根”の植栽計画・工事を担当。建築家suniaの津田朋延さんとともに作品づくりに携わる。休校になっている小学校の校舎と校庭をまるごと作品化した“女根”は、とてつもない量と種類とルックスの植物が大量に用いられた。

 

「〜咲かせよう、希望のさくら〜」Sakura Project Ⅱ

 

ルミネにて被災地のサクラを咲かせるプロジェクトの2回目。2012年に続き、東北3県(岩手・宮城・福島)をまわり、被災地の方々の協力を得てサクラを収集。ルミネ新宿に全長約7mに及ぶ満開の「桜道」を作り上げた。     

 

阪急西宮ガーデンズ「GARDENS 5SEASONS」教えてくれたのは、植物でした。

 

関西でもっとも勢いのあるショッピングセンターである西宮ガーデンズが5周年を迎えるにあたり、そら植物園が1年間のパートナーとなり各季節を通してさまざまな展示やイベントを行なった。春は大きな桜を、夏と秋は季節に応じた植物の展示と販売、アニバーサリーである11月は西宮ガーデンズのシンボルであるオリーブの巨木を、冬はクリスマスにあわせて白樺の通り抜けを演出した。

 

旧小笠原伯爵邸

 

東京都が指定する歴史的建造物・小笠原伯爵邸の庭園改修に着手。樹齢500年のオリーブをシンボルに、ナツメヤシなどスペインの庭園に欠かせない植栽を提供。オリーブの除幕式にはスペイン全権特命大使であるミゲル・ナバーロ閣下がご臨席され、大きな賞賛と評価がされた。

 

2012年よりも活動の幅が大きくなっています。日本各地で活動が行われるようになっていて、このほかにもハウステンボスなどでイベントが開催されました。さくらのプロジェクトは好評のようで二回目が開催されています。

 

西畠清順さんの活動2014年

北陸新幹線開通1年前イベント(越五の国)

 

北陸新幹線の開業日にあわせ、上越市をはじめ近隣 の妙高市・十日町市・柏崎市・佐渡市の5市から集めた桜の枝を、上越妙高駅に満開に咲かせたプロ ジェクト。 各市での桜のハンティングはもとより、地元小学校で子どもたちにプロジェクトの想いを伝える『夢サクラ講義』などを行い上越妙高駅開業を盛り上げた。

 

「想いをつなぐ、さくらの花びら」Sakura Project Ⅲ

 

ルミネにて被災地の桜を咲かせるプロジェクトの記念すべき3年目のプロジェクト。福島県の花木団地の方々からの協力を得て、ルミネ大宮にて満開の被災地のサクラで花道を出現させることに成功した。

 

神戸国際会館

 

神戸のランドマークである神戸国際会館の11階屋上ガーデンが、阪神淡路大震災から20年目となる2015年、大改修工事を経て、「楽園」というコンセプトで新たに生まれ変わった。屋上ガーデンという特殊な空間に、世界各国の植物が共存。シンボルツリーとしてお客様を迎えるのは、神戸とも縁が深く、平和と反映の象徴とされる樹齢約500年のオリーブの木。

 

八芳園Intermedia Japan 2014 Annual Gala

 

外交コミュニケーションに特化したメディア・エイジェンシーであるインターメディアジャパンが主催し、世界各国の大使が集ったパーティの会場演出をプロデュース。どの国の大使が来ても自国の植物に出会えるよう、各国を代表する植物を日本の伝統の織物生地の鉢カバーに入れ、会場中に配した。通常のパーティ装花とかけ離れたコンセプトは各国の大使たちに絶大な好評を得た。

 

TOKYO DESIGNERS WEEK 2014

 

1986年より例年開催されている、建築、インテリア、プロダクト、グラフィックなど優れた生活デザインとアートが世界中から集まる国際的なクリエイティブイベントにて、イベントのシンボルを担当。数ヶ月前にアルゼンチンの山奥で清順自らがハンティングしてきた巨大なパラボラッチョを会場に運び込み、大人から子どもまで会場の参加者でシンボルを植樹するイベントを行なった。

 

オフィス緑化やクリスマスのイベントなどが行わました。さくらのイベントは3回目でかなり好評のようですね。

 

西畠清順さんの活動2015年

TAKASHIMAYA SHOPPING March BOTANICAL GARDEN produced by 西畠清順

 

『髙島屋が植物園に!?』をキーワードに、髙島屋の主要5店舗に、清順がプロデュースした植物園が出現。重要文化財である日本橋店では、昔の大英帝国がロンドン万国博覧会を催した際の巨大なガラスの温室『クリスタルパレス』をイメージし、正面玄関ホール・正面ウィンドー・地下ウィンドー・VPゾーンに200種類以上の植物達が登場。

 

marunouchi sakura garden

 

丸ビル1F のマルキューブに満開の桜とピンク色の石楠花「桜狩」を敷き詰め、丸の内にいち早く春の空気を届けた。

 

地域を活性化させるグループ事業 『知ろう!伝えよう!みどりの魅力!』

 

名古屋・東山植物園にて開催された、イベント『知ろう!伝えよう!みどりの魅力!』にて、トークショーおよび植樹式の企画に参加。「都市と植物」をテーマに、清順がこれまでに旅した国やおもしろい植物たちについて講演し、植樹式では東山植物園80周年にちなんだオリーブの樹を参加者全員で植樹しました。

 

西畠清順の世界七大陸植物園!!

 

福岡市内の埋立地、アイランドシティにて3ヶ月に渡り開催された植物の展覧会。清順が世界中から集めた、珍しい草木や巨木たちを中心に会場を構成。太古のゾーンを含む「世界7大陸」をめぐる冒険を体験するというまったく新しい着眼点の植物園を福岡に出現させ、開催のための協賛金は 6,000万円を超えた。イベント期間中には、巨木パラボラッチョを福岡市内と会場に登場させたことでも話題となり、会期中の総来場者数は6万人を記録した。

 

ウルトラ植物博覧会 ~西畠清順と愉快な植物たち

 

銀座のポーラミュージアムアネックスに世界の驚くべき植物を50種類以上を集結させた植物の博覧会をプロデュース。世界の植物の多様性とその文化背景を知ってもらうことでより一層植物そのものの魅力を伝えるもので、連日大勢の人が詰めかけた。

 

このほかにも広告に出演したり、大学で特別レクチャーを行ったりしました。

 

西畠清順さんの活動2016年

Gardens by the Bay “Blossom Beats”

 

日本とシンガポールの国交50周年の春というタイミングで、 シンガポール政府が手掛ける世界的な植物園・ガーデンズバイザベイにて催された桜の花見イベント。そら植物園の母体である花宇で代々培われてきた「開花調整」技術と、年間200tに及ぶ輸出入の経験を発揮し、大量の桜とノウハウを提供。シンガポールで初の桜のイベントを成功させた。イベントは世界中でニュースとなり、期間中には、リー・シェンロン首相も来場、週末だけで来場者2万人を超える記録を残した。

               

アトレ恵比寿西館 アトレ空中花園

 

恵比寿駅直結のアトレ恵比寿に寄り添う形で、2016 年春にオープンしたアトレ恵比寿西館。その屋上庭園と4階テラス、そして外構の植栽を、そら植物園がプロデュースした。屋上庭園は「日常×非日常」をコンセプトとし、駅を行き交う人々にとって「日常的」な存在であるアトレに対して、通常の屋上緑化ではあまり見かけない大きな老木や自由な樹形の木、枯れているのか生きているのかわからない植物、珍しい花など、多種多様な植物を用いて「非日常」な庭を展開した。

 

こんにちは、ひょうごっこ。ベビーギフトカタログ シンボルオリーブプロジェクト

 

県内で赤ちゃんが生まれた家庭に「ひょうごからの贈りもの」としてベビーギフトカタログを贈呈する、兵庫県の企画「こんにちは、ひょうごっこ」。清順と2015年生まれのひょうごっこで、そのオリーブを植える「シンボルオリーブ植樹祭」を開催した。

 

代官山蔦屋書店T-SITE Green CHRISTMAS

 

代官山T-SITEの5周年記念のクリスマス装飾をプロデュース。蔦屋書店オープン当初からのテーマでもある「森の中の図書館」を、5大陸をイメージしたそれぞれの原産の植物で彩られた「生きる植物図鑑の森」として出現させることで具現化し、また、店内にあるマガジンストリートは「白樺の森」に変貌させた。

 

ホテルニューオータニ 「秀吉のクリスマスツリー」

 

30周年を迎えたホテルニューオータニ大阪のクリスマスを演出。「大阪城がお庭です」という30周年のコンセプトをヒントに、かつて豊臣秀吉が大阪城を建設する際に飛騨材の巨木を採出し大阪へ運んだことから、実際に飛騨から11Mもの巨大なもみの木を切り出し、クリスマスツリーとして使用した。

 

この年はシンガーポールでのイベントなどもあり、海外への進出がありました。このイベントも大好評で後に二回目が開催されました。体験型のイベントなども開催されている。

 

西畠清順さんの活動2017年

Amazon Fashion Week TOKYO 2017

 

世界の「5大ファッション・ウィーク」の一つ「Amazon Fashion Week TOKYO」期間中にアンダース東京にて行われたディナーパーティーの会場装飾をプロデュース。開催が3月ということで、「一足早いお花見」とamazonとをかけて、「amazon見」をテーマに、熱帯地域にある植物や花、満開の桜を使い、世界中からの招待客のみで賑わう1日限りのディナーパーティーの空間をダイナミックに演出した。

 

東京国際フォーラム開館20周年記念イベント

 

東京を代表するコンベンション&アートセンター「東京国際フォーラム」の開館20周年を記念するパーティの植栽をプロデュース。20周年にちなんで開花調整した20本の巨大なシダレ桜を配した、本格的な日本庭園を一夜限りのために作庭した。また、その日本庭園は実際の東京都の輪郭を象っている。

 

宇部市ときわミュージアムリニューアルオープン「世界を旅する植物館」

 

山口県宇部市が誇る180ヘクタール以上もある広大なときわ公園の中にあるときわミュージアム(植物園)・ときわ動物園のリニューアルプロジェクト。清順は「ときわミュージアム 世界を旅する植物館プロデューサー」に就任。各大陸には「スーパーツリー」が植えられ、実際にアフリカから移植された日本最大級のバオバブやNHKスペシャルで放送された、清順が地球の真裏から持ってきたパラボラッチョなど、他では見られない貴重な植物を見ることができる。また、植物園にもともとあった植物を、きちんと分布大陸別に整理・移植して活かし、園を一周すると世界を一周旅したような気分になれるような仕組みにした。

 

新千歳ANA GOLDラウンジ

 

建築家・隈研吾氏が空間デザインを監修する新千歳空港の、ANAラウンジのリニューアルにアドバイザーとして参画。中央に配する、象徴的な巨大テーブル上に、北海道の丘陵を彷彿とする苔のオブジェ制作の手法などを提案した。

 

Siwilai City Club

 

2014年にバンコクの中心街にある、タイで最もラグジュアリーなショッピングモール、セントラルエンバシー。ハイエンドなブランドショップがひしめくなかで、オーナーが力をいれてプロデュースしたソーシャルクラブ・siwilai city clubにて、クリスマスのインスタレーションを行った。レストラン内は、北海道から輸出した白樺を多用し、そこで雪に見立てて制作したコットンボールを配してタイの人がみたことのないような北欧の冬の森を室内に表現。テラスには、終わりがないことから永遠の象徴とされているクリスマスリースを、タイ国内で調達した数千の着生植物を用いて、3mという巨大なスケールで制作した。

 

海外ではシンガポールに続いてバンコクでプロデュースをしました。そのほかにもドラマへ植物提供などをしています。

 

2011年の活動はオリーブのみでしたが、次の年は代々木VILLAGEを皮切りに、たくさんの活動が行われるようになりました。代々木VILLAGEは、都内を中心に商業施設のあり方に大きな影響を与えたようです。そのためその後商業施設からの依頼が増えています。2016年には海外でのイベントも行われ、好評のまま二回目が開催されたりしました。定期的に開催されるようになったイベントなどもあります。そしてはじめは都心での活動が多かったようですが、今では地方での活動も増えていて全国各地に事例があります。年々活動の数は多くなり、活動の幅も広がっているようですね。2018年では、桜を使ったイベントがいくつか開催されており、そのほかにも結婚式の装飾などが行われました。特にウェッジウッド展では、イギリス王室御用達の陶磁器ブランド・WEDGWOODが、独自の素材である「ジャスパー」を使用した新しい植木鉢・バーリントンポットをリリースするタイミングでコラボレーションをしました。会場となった伊勢丹新宿店と阪急うめだ本店では、「最高の家時間」をテーマに、西畠清順さんが実際にウェッジウッド本社に招待された際に感じたインスピレーションを元に制作したそうです。また、バーリントンポットに合わせたユニークな植物のセレクトなどを行い、完売するなど反響を得ました。これからの活動にも注目していきたいですね。

西畠清順さんの活動2018年

ハピネスパーク 千年オリーブの森

 

大阪府の京阪奈墓地公園内にて、国内最大級の樹木葬専門霊園をプロデュースしました。ツゲとインターロッキングで描かれた幾何学式庭園に、仏教寺院の墓地であるものの、無宗派でも歓迎する霊園のスタンスや、バリアフリーで足腰に不安のある方も安心してアクセスできるランドスケープデザインを存分に活かして、人の集いやすい霊園の在り方を提案しています。この園のシンボルには樹齢約1000年のオリーブと、樹齢約500年同士の寄せ株オリーブが選ばれています。ただシンボルとして掲げるだけでなく、それらから採れたオリーブオイルでランプを灯すライトアップイベントなども計画しています。これらを通じて地元の子供たちとの交流を行うなど、植栽計画とイベントプログラムが相乗効果を生み出している点も特徴です。

 

Tilal Mall

 

アラブ首長国連邦の中でも特に伝統的かつアラブ文化が根付くシャルジャ州にて計画、推進されている大規模プロジェクト「ティラールシティ」におけるシンボルモニュメントのコンセプトワークを作成しました。現地のメディア・建設会社の要請・協力によりこのプロジェクトが実現したそうです。
”The Tree”と名付けたモニュメントは、西畠さんが積極的に取り組む”世界樹”をテーマに、世界一巨大な樹木型のランドマークという構想だそうです。
キャノピー部分は巨大なガラスの球体で、庭園・森・水・空・宙の5層のフロアに分かれています。メインとなる庭園フロアには現代の「バビロンの空中庭園」に見立てたチャハルバーグがあり、サーカスのショーやアートイベントなど様々な催しも開催可能です。夜にはプラネタリウムのように、NAKED Inc. によるプロジェクションマッピングを見ることもできます。
庭園はイスラム式庭園で、4つの水路で分断されて、その水は太古のシダ植物が覆う森フロアへと流れ落ち、さらにその下にある水フロアへと辿り着くと、ポンプで運ばれて庭園フロアへと戻り、巡回します。空フロアでは、横回転式の観覧車に乗ってシャルジャやドバイの街が一望できるアトラクションになっています。宙フロアはVIP専用のフロアで、キャノピーの中央に浮いているように位置していて、ヘリポートからも直接アクセスできるようになっています。他にも「幹」となる部分は双子葉類の維管束植物の法則をモチーフにして内部にエレベータが配置されていたり、外部の樹皮のように配置された立体ソーラーパネルは施設全体の空調用の電力を賄ったりしています。

 

生田の森 子どもガーデン 2018 presented by そら植物園

 

生田神社でプロデュースした子ども向けのイベントです。普段はあまり子どもが遊ばない鎮守の杜の中心部を100mもの白い寒冷紗を使って子どもたちが遊べる迷路にし、その迷路の中に様々な遊具や仕掛けが用意されていました。遊具には鳥の巣のようなツリーハウスやハンモック、鎮守の杜の落ち葉で作った落ち葉クッション、ヤシガラでできたブロック、ボールプールなどがありました。他にも「子どもラウンジ」と名付けたドームの中には絵本やお絵かき帳が置いてあり、清順さんによるオリジナル絵本の読み聞かせを行ったり、茅葺き屋根のワークショップで秘密基地を作ったり出来ました。どのアトラクションも子ども達に大人気で、普段はできないような貴重な鎮守の杜との触れ合い体験を創り出すことに成功しました。

 

セレオ八王子 北館「光と緑のレストラン セレオフォレストダイニング」

 

八王子駅直結の商業施設の「セレオ八王子」のレストランフロアのリニューアルに伴う、緑化計画の設計施工を担当しました。リニューアルの空間プロデュースをしたインテリアデザイナーの松本照久氏のイメージを活かしつつ忠実に表現しています。吹き抜けを生かした空中植栽が特徴で、海外の公園や広場をイメージしながら緑豊かな八王子ならではの光と緑に包まれた居心地の良い空間を作りました。

 

西畠清順さんの活動2019年

Centrepoint 50th Anniversary

 

イギリス・ウィリアム王子がパトロンを務めるホームレス支援団体「センターポイント(Centrepoint)」の50周年を記念したチャリティイベント「Centrepoint 50th Anniversary」で植物装飾のプロデュースを行ないました。
パーティ会場となったラウンドハウス(The Roundhouse)はジミ・ヘンドリックスやピンク・フロイド、デヴィッド・ボウイなどがパフォーマンスしたことで知られており、鉄道の転車台だった建物をリノベーションした劇場として使われています。この劇場の特性・歴史も踏まえつつ、パーティ会場の空中全体に緑が潤うような大胆なイメージを立案しました。
現地のオペラ会場制作チームと協力して世界中から集まったVIPをもてなし、大きな評価を得ました。

 

池田市制施行80周年記念イベント「細河ボタニカルフェスティバル」

 

西畠さんが経営する、そら植物園本社農場がある大阪府池田市の市制施行80周年記念イベント「細河ボタニカルフェスティバル」における作品制作です。大阪府池田市は室町時代から続く植木の郷で「日本の四大植木生産地」と知られています。「細河ボタニカルフェスティバル」の開催にあたり、池田市から「木をテーマにしたモニュメント」の制作依頼を受けて、キングコング・西野亮廣氏とタッグを組んで巨大なシンボルプラントを制作しました。西野氏の絵本『チックタック 約束の時計台』に出てくる「木の時計台」をモチーフに作品を制作しています。
西野氏の立ち上げたクラウドファンディング『木の時計台を作りたい』 byキングコング西野 では、769人の方々から支援が集まり、支援者へのリターンには「池田市の山に木のツルや枝を狩りに行ける権利」や「時計台を一緒に作れる権利」などがあり、参加型の制作過程で人々を楽しませました。話題作りやイベントの集客を通じて、地元に大きく貢献しています。

 

a LITTLE a LOT

 

スキンケアブランド「a LITTLE a LOT」のリリースにむけて、ブランドコンセプトに合うパッケージデザインやビジュアルの撮影を全て本物の植物で行う為、アドバイザリーから植物の選抜、撮影準備までをそら植物園で担当しました。選抜された植物は地模様や斑入り、葉の素材感などを活かせるように努め、撮影現場では対象植物の持っている特徴や視点などが美しく見えるアングルについてアドバイスも行ったそうです。

 

ケアリイ・レイシェル ジャパンツアー2019

 

ハワイを代表するカリスマミュージシャンであり、自然を愛するケアリイ・レイシェルのジャパンツアー2019のステージを大胆な植栽で演出しました。機材配置やスクリーンの高さ、演者との位置関係を意識しつつ自然樹形の植物にこだわりながら効果的にプロデュースし、全国6公演ツアーすべてをともに周り演出しました。

 

今のAFRICA

 

「今のAFRICA」は駐日アフリカ外交団によって企画され、文化紹介や様々なアクティビティを通して今のアフリカを紹介するイベントです。西畠さんはステージ装飾を担当しました。高円宮久子妃殿下やアフリカ各国の大使、麻生太郎副総理などが出席するにあたり、外務省や警察と共にセキュリティを意識しつつ、あえて花器ではなく木性シダを用いて、ケニア産のバラ500本を活けました。

 

暗闇の清水寺

 

母の日と旧暦の灌仏会が重なる令和元年五月十二日夕刻に清水寺で開催したイベント杜”「暗闇の清水寺」~千本のカーネーションで祝う お釈迦さまの誕生日~”の企画とインスタレーションを担当しました。
イベントに集まった参加者と一緒にライトを消し貸切った清水寺にて、普段は解放されていない京都の街を一望できる西門から夕陽が落ちるのをゆっくりとながめたり、本堂での森清顕師のお経を聞いたり、重要文化財である経堂にて、師と対談を行いました。場の中央にしつらえたインスタレーションは、イベントのテーマに寄り添って、お釈迦様が生まれたルンビニーの花園をイメージした古い煉瓦の花壇に1000本のカーネーションを用いて制作しています。

 

世界らん展2019 -花と緑の祭典-

 

世界らん展実行委員会が主催し、アメリカ蘭協会(AOS)、英国王立園芸協会(RHS)、世界蘭会議委員会(WOC)も後援する日本の大規模な国際園芸博覧会「世界らん展2019-花と緑の祭典-」にて、シンボルモニュメントとシンボルロードを手がけました。「いままでのらん展を変えたい」という主催者の想いを受け印象的な演出が施されましたが、あえて特殊な植物は用いずに、あくまで受賞したらんを引き立たせることとしたそうです。オープニングには高円宮家の長女、承子女王殿下がご高覧になり、会期中には13万人を超える来場者を西畠さんの演出で迎えたそうです。

 

第36回全国都市緑化信州フェア

 

長野県で開催された日本最大級の花と緑の祭典、第36回全国都市緑化信州フェアのメイン会場にて、「劇団四季展」、「みて、ふれて、つくって『いわさきちひろ・花とあそびの庭』」と並んで特別企画展の制作依頼を西畠さんが受け、「そら植物園・西畠清順による信州産サボテンによるインスタレーション」をプロデュースしました。
信州は内陸特有の気候で、サボテンの原生地であるメキシコ高原やアンデス山脈の風土を再現しやすく、サボテンの栽培に適した自然条件が備わっていることから、「サボテンにフォーカスした展示を」という主催者の依頼に応えるべく、パビリオン内は360度の鏡張りの空間とし、サボテンを使い無限に広がるようなメキシコの原風景を再現しています。
使用したサボテンは、サボテンの産地である長野県下伊那郡豊丘村の愛好家の方たちが栽培したもののみを使い、景石や砂利は長野県塩尻市の善知鳥峠の石灰岩や、地元の河川から採取された流木を使用しています。
さらに、会場ブースパネルの外壁面には、松本市立菅野中学校の美術部の生徒さんたちが描いた絵画を貼り、設営には大人から子どもまで70名を超える地元信州の方々を中心としたボランティアスタッフ協力のもとで制作したそうです。

 

掛川花鳥園「花と鳥の楽園計画」

 

静岡県掛川市の「花と鳥とのふれあい」が楽しめるテーマパーク「掛川花鳥園」で、そら植物園協力による写真スポット「花と鳥の楽園計画」を期間限定で展示しました。
ただ展示するだけでなく実験的に緑化を実現し、植物の装飾にとどまらないプロデュースを行いました。鳥達が気持ち良さそうにくつろぐ憩いの場となり、また隠れ家が出来た事で鳥同士の小競り合いの抑制にも繋がったそうです。
多くの植物たちとそこに鳥が入り込む事でとても印象的な空間となりました。

 

西畠清順さんに関連する書籍について紹介します。

『花プラントハンター 命を懸けて花を追う』

 

年間移動距離、地球三周分! まだみぬ「花の奇跡」を追い求めて、日本全国、世界各国を飛び回る!あらゆる職人仲間から「絶対不可能」と言われた樹齢1000 年のオリーブの大木をいかにして輸入したのか? 世界最大、重量12 トンのボトルツリーをオーストラリアから輸入せよ! 真夏の結婚式に満開の桜を納品できるのはなぜ?

「絶対不可能」を覆す常識破りのハンティングで注目を浴びる、若き「植物探索者」西畠清順。そんな彼が自身の「植物ハント」物語を軸に、人の意識を変える「植物の力」を余すところなく描いた大興奮ノンフィクション!

 

『教えてくれたのは、植物でした人生を花やかにするヒント』

 

世界30カ国以上で植物と向き合ってきた、大注目のプラントハンター、西畠清順氏。世界中のメディアが注目する西畠氏が、いまいちばん伝えたいことを凝縮したフォトエッセイ! 植物と会話する方法とは? 世の中に「雑草」という草は存在しない? すべては、木のように成り立っている? 木を切ることは、かわいそうではない? 植物は決して自分だけが得しようとはしない? 人生を「花やか」にするための、驚きと発見と学びに充ちた一冊!

 

『プラントハンター西畠清順 人の心に植物を植える:地球を活け花する』

 

現代のプラントハンター西畠清順氏。老舗の植物卸問屋「花宇」の5代目であり、天皇家や銀閣寺などの依頼主のための活け花の花材を中心に、多様な植物を3000種以上栽培し、最高の状態で納めている。また、世界中を飛び回って、日本人が見たこともないような植物を探しては日本に送り込んでいる。そんな西畠氏を追ったのが「NHKスペシャル 地球を活け花する~プラントハンター・人の心に植物を植える」だ(2015319日放映)。本書は番組の取材記であり、西畠氏の魅力を最大限に伝えるものだ。中心となるのはアルゼンチンでのバオバブのような巨木パラボラッチョ探しだ。三日三晩かけて掘り起こし、独自の技術で養生して木を眠らせる。船便の手配がつかず、緊急空輸することにする。掘り出してから5か月後、ようやく日本に到着した巨木は奇跡的に長い眠りから覚める。西畠氏は「パークシティー大崎」の空間開発も手がける。「人間が創造する建造物群の真ん中に、自然が何百年もかけて作り出した命を植えることで、地球が持つポテンシャルを感じてほしい。そうすれば、植物への愛で自然や環境のことを考えてもらえるようになるのではないか」と西畠氏は言う。

 

『そらみみ植物館』

 

おそるべき才能をもった植物、秘境・ソコトラ島の植物、ムラムラくる植物、そして──愛を語る植物……。世界中にいる摩訶不思議な植物たちを、その裏側にあるいちいちおもしろいストーリーとイラストで紹介します。著者は、寝ても覚めても植物のことばかり考えているプラントハンター・清順。20113月には「情熱大陸」にも取り上げられた話題の人物です。彼が世界中を旅して出会った何千、何万もの植物の中からよりすぐりの約60点を独断と偏見でピックアップ。植物の話が、そらみみのように聞こえ、ふと気づくとあなたの心のなかにも植物園ができるような……そんなイメージの植物エッセイです。

 

『はつみみ植物園』

 

大好評「そらみみ植物園」に続く第2弾は、「はつみみ植物園」。

「そらみみ植物園」では、世界のおもしろい植物を、それにまつわるストーリーとともに、紹介しましたが、「はつみみ植物園」では、知らなきゃ恥ずかしい、植物にまつわる常識を紹介します。いつも見ている植物たちがもっと面白くなる、植物にまつわる“はつみみ"なお話をあなたにお届けいたします。

 

調べていると西畠清順さんのインタビューがたくさんあったので、ひとつ紹介します。

西畠清順さんのインタビュー

https://www.daiwahouse.com/sustainable/sustainable_journey/interview/nishihataseijun/index02.html

『大和ハウスグループサステナブルな人 スペシャルインタビュー』から一部抜粋

 

―― まず、清順さんと植物との関わりから教えてください。

家業は5代続く花と植木の卸問屋で、生け花の家元やフラワーデザイナー、フラワーアーティストなどと取引をしています。若いころは植物にあまり興味がありませんでした。ただ、物心ついたころから、住み込みの職人さんたちと生活を共にしており、毎日汗をかきながら土と格闘し強くたくましい彼らと共に働きたいという思いは強かったです。世界を放浪したり、今の仕事とは全く違う業種のアルバイトをしたりした経験はありますが、結果的に、この仕事以外の道を考えたことは一度もなかったですね。

 

―― 迷うことなく植物の世界一筋だったのですね。植木の卸問屋とはどのような仕事なのでしょうか。

実家の「花宇」に入る前の1ヶ月間、別の業者に修行へ出されたんです。初日から植物の採取のため山に分け入り、寝泊まりは車の中という生活。そういう毎日の中で、切ってはいけない木を採取してしまい、問題になったという経験もしました。それまで自分の使命は植物を探し出すことだと思っていましたが、植物を守る側に立ったうえで魅力を伝えたいと考えるようになりました。

 

―― 花が咲く姿は華やかですが植木の卸業は裏方ですよね。

プラントハンターは、王侯貴族や生花の家元に美しく貴重な植物を供給する黒子的存在です。ともすれば植物を配送トラックの荷台に積み込んでしまえば仕事はそこで終わりといったところ。昔は、花と言えば表面的に美しく飾られていれば良しとされていましたが、現代ではテーマや意義が重視されるようになった。だから、30歳を目標に裏方から表舞台に出てみようと考えていたんです。それを形にしたのが、植物のコンサルティング事務所「そら植物園」です。

 

―― 「そら植物園」を作ったきっかけは?

一つは、日本の植物業界は生産者と飾る人が別だということ。海外の途上国などでは、畑で花を育てている人が収穫し、店に持っていって飾る。日本は流通が成熟しているがゆえに、生産者と表現者の距離があって、生花店、庭師、造園業者など、世の中に植物の表現をもたらす仕事をしている人でも、我々のような生産卸業者が当たり前に目にする植物の育つ姿を知る機会が少ないのです。

 

―― 意識したことはなかったですが、我々消費者も、生花店や庭師、造園業者も、目にするのは、花が咲く前後の短い期間に限られているというわけですね。

花が世に出るのは、開花のピークに向け仕上げられた一瞬でしかありません。その花がどこでどのように育てられ、どうやって運ばれたのかは知るよしもない。そういった慣習を壊すため、自分の名前を表に出したプラットフォームを作りたかったんです。

なぜその場所に、その種類の植物が必要なのか?という背景まで把握した上で世の中に伝える。長年卸業で培った目利きで集めた植物の質と、信頼関係を築いてきた庭師や盆栽師といった施工業者との間に築いてきた信頼関係は誰にも負けないという自負がある。

プロジェクトにぴったりな植物と表現者を組み合わせ、その植物のストーリーも伝えられるような提案をすることができるシステムというわけです。

 

―― 海外に出かけて植物を採取する「プラントハンター」としても活躍されていますが、具体的にはどのように植物を探すのでしょうか。

目的の植物が生育する国の地域コミュニティの中に入っていくんです。英語の通じない所も多く、コミュニケーション能力が問われる。この代々木VILLAGEにも植えられているボトルツリーはオーストラリアに自生していたものですが、人里離れた場所で安全に掘り出して日本に運ぶためには、現地の顔役に話を通し、様々な書類を用意するという、綿密なプロの仕事ができて初めて国外への持ち出しが可能になります。

 

―― とくに印象に残っている植物との出会いは?

中東で「アラブの春」の政変が起こったころ、アラビア半島にあるイエメン共和国の砂漠で植物を採取していたんです。辺りを武装した民兵の車が走り回っているという緊迫した状況で、ふと見た道端にアデニウム・アラビカムが咲いていた。

「砂漠のバラ」とも呼ばれる塊根植物の原種で、色合いは派手ではないのですが、素朴な姿に感動したんです。今ではイエメンで採取した種を第三国で育てて日本にも輸入しており、人気の観葉植物となっています。

 

―― その土地に足を運ばないと本来の魅力は伝えられないのかもしれません。価値のある植物を見つけるコツは?

情報は世界中から入ってくるので、価値を見分ける目利きである必要があります。いくら苦労して秘境にたどり着いても、珍しい植物かどうか見分ける力がないと意味がない。日本では価値が高くても、現地では「こんな木を欲しがるのか?」と不思議がられることもあります。最近では海外でも私の存在を知られるようになったおかげで、大使館を通じて「こんな植物があるんだけど?」という打診もいただくので、この5年間やってきたことがようやく実を結んだという手応えを感じています。

 

ここまでさまざまな面から活動を見てきましたが、本当に多岐にわたっていることがわかりました。年々活動の幅が増えてきていて、これからももっと広がっていくと思われます。意外と身近にも西畠清順さんが手掛けた空間やイベントがあるかもしれません。

西畠清順さんの「教えてくれたのは、植物でした」を読んでみて

上記にて書籍について簡単に紹介している「教えてくれたのは、植物でした」ですが、ここでは私が読んでみての感想を誠に勝手ながら紹介させて頂きます。少しばかり長いですが、結構読み応えがあったので、短くしたつもりですが長くなってしまいました汗

まず本の構成として花、根、幹、枝、葉、種、土の章とあり、構成そのものが植物に沿って分けられています。章の中には話がいくつかあり、一つ一つが2ページ程度の短い話になっています。いずれも全て色々な植物や、色々な国のことの興味深い話、考えさせてくれる話が多くありました。

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“念ずれば花開く”は始まりの合図

私たちが日常の中で無意識に使っている言葉や言い回しには、実は、植物から得たものが多くある、と西畠清順さんの経験を交えて書かれています。

西畠さんは高校時代、座右の銘マニアで自分のピンときた言葉に出会っては毎日目にするところに”そのとき一番流行っている座右の銘”を書いて気合いを入れる習慣があったそうです。その中でも高校球児だった西畠清順さんにとって一番の座右の銘が”念ずれば花開く”でした。甲子園の舞台に立ってホームランを打つことが夢だった西畠清順さんにとってはぴったりの座右の銘だったに違いありません。

その後、現在の植物を扱う仕事になってからも心の中に強くあったそうです。ですが、西畠さんは仕事を通して植物を理解していくうちに衝撃的な事実に気づくことになります。植物が花を咲かせるという行為が植物学的にいえば、実をならせるための準備行為で、実こそがゴールで花はスタートであり、“念ずれば花開く”とは強い思いを持って行動していればいつか夢が叶うという意味ではなく、夢を叶えるためのスタートラインに立てるということだったと、植物の生理を知ることによってわかることができたと書いています。そして、私達の日常にもたくさんの植物にまつわる言葉や言い回しがあり、植物をひとつ理解することはこの世に起こっている万物の現象を一つ理解することに似ていると西畠さんは言っています。

西畠清順さんの経験から、私が今まで気づかなかったことに気づかせてくれて、まだ一章目なのにこのような考え方に感銘を受けてしまいました。この本を通して植物について知ることでまだ知らない新しいことに気づくことができると思います。それに、植物についてもっと身近に感じるようになって日常が前よりも華やかになりますね。

雑草のように強く生きるは間違っている

次は雑草にまつわる言葉、“雑草のように強く生きる”、“雑草魂”について、植物の持つ意味を通して西畠清順さんの考えが書かれていました。

雑草とは特定の名前ではなく、農耕地など人間が開墾し作物などを育てようとしている場所に、人間の意図と反して侵入し、育っている草すべてのことを指すそうです。そして、その雑草と呼ばれている草にはそれぞれ名前があるそうです。すなわち、人間のエゴによって雑草と呼ばれているということです。また、雑草と呼ばれる草の名前もヘクソカズラやハキダメギクなど植物に対する侮辱が反映されている例が多いそうです。また、英語で雑草を意味する「weed」も“邪魔なものを排除する”という意味だそうです。

そして、このことを前提に雑草の意味を知っても私達は雑草という意味をポジティブに使えるか問いかけています。そして最後にこの話の中でこんな言葉も引用していました。
「どんな植物でも、みな名前があって、それぞれ自分の好きな場所で生を営んでいる。人間の一方的な考え方でこれを雑草として決めつけてしまうのはいけない。注意するように」これは植物に造詣の深かった昭和天皇のお言葉だそうです。

雑草の意味を考えたことがある人なんて中々いないじゃないかと、この着眼点に驚かされました。確かにこの意味を知っても雑草をポジティブに使い続けることはできないですよね。そして、私達人間は、自分たちにとって厄介なものに対しては酷い扱いをするエゴイズムについて考えさせられます。雑草以外にも言えますよね。

・“根回し”という概念と技術は、緯度が生んだ
「根回し」とは樹木を移植するときに先立って準備する一連の作業を指すそうです。そこから転じて物事を行う際に事前に関係者からの了承を得ておくことを指す言葉になったそうです。

そしてこの根回しという概念は、日本独特だそうです。南国や砂漠といった暑い条件の中で育つメカニズムのできている植物は四季によって扱いを変える必要性があまりなく、根回しをする必要がないそうですが、温帯圏の日本の樹木は季節によって樹木の運動量が変わるため適切な時期に移植をしないと枯れてしまうそうです。そのため根回しが必要なのだそうです。

根回しとは日本という国がたまたま四季を持つ緯度上にあったことが生んだテクニックであり、概念であり、ビジネスシーンでもきめ細やかな下準備をしておく日本人独特の「NEMAWASHI」という概念につながっていると西畠清順さんは書いています。

根回しなんて誰もが使ったことのある言葉が植木職人の仕事上でのテクニックとは全然知りませんでした。この話に四季について書かれていますが、ほぼ同じ緯度にある国で日本くらい四季のはっきりしている国はたくさんあるそうです。しかし、これほど自然が美しい国は少ないそうです。日本人としての独特な感性や細やかな気づかいは四季と美しい自然によって育まれたのかもしれないですね。

“おかげさま”とは、植物のこと

おかげさまという意味は他人から受ける恩恵や利益に対する感謝の意を表す言葉ですが、そもそも“御蔭”とは神仏などの助けを意味しているそうです。つまり、目に見えないものに対する尊敬の気持ちが現れている言葉だと言っています。そして、二酸化炭素を吸収し生きる上で欠かせない酸素を供給してくれる植物ほど目に見えないところでお世話になっている偉大な存在は他にはないと言っていました。

日本には色々なものに神が宿っているという考えがありますよね。元々日本は自然信仰をしていた国だと考えれば“おかげさま”の“御蔭”も本当に植物なのかもしれません。太古の日本人を見習ってもっと植物に感謝する気持ちを持ちたいですね。

・植物に詳しい人など、いない
世界には約27万の原種の植物が存在するといわれ、園芸品種を加えると40万種以上にもなるそうです。しかし世界最高峰の植物学者でさえ1万種ほどしか植物を同定することができないそうです。このことから清順さんはどんな天才でも、その一生を懸けて毎日努力しても、あるひとつの道を極めることは容易ではなく、物事を知っている人ほど知らないことを悟ることができると書いています。

この話を読んで哲学者ソクラテスの有名な言葉、「無知の知」が思い浮かびました。真の知への探求は自分が無知ということを知ることから始まるという意味だったかと思います。本書の他の話を読んでもわかりますが、西畠清順さんの探究心や洞察力の深さ、仕事への熱意が伝わってくるお話だと思いました。

万事は木のように成り立っている

2012年まで西畠清順さんは幕末から約150年続く花と植木の生産卸業・花宇の五代目としてひたすら地道に仕事をしていたそうです。そして2012年1月から家業を継ぎながら、新しく植物専門のコンサルティング事務所を構え、「そら植物園」という活動を始めたそうです。
様々な企業や団体、行政機関、クリエイターなどの仕事の相談を受けたり、一緒にプロジェクトを進め、世の中に発信したりと、フラワーデザイナーや華道家を裏で支える家業とは全く違う活動をしているそうです。西畠さんは「空植物園」の活動を木に例えて、“時間とともに色々な方向にどんどん枝を広げて花が咲き始めているようなイメージ”と書いています。そして、その活動の支柱は365日ただひたすら野山を回り畑仕事をしていた家業での10年間の経験だとここでは書いています。

ベンジャミンの巨木は大きく広げた枝の下に入ってみると、その枝と同じくらいの太い根が地中に広がっているそうです。仕事や活動を見るときも表面に出ている部分だけでなく、大切なことはその根っこを想像してみる事かもしれないと西畠清順さんは語っています。

西畠清順さんの現在の活動が広く認められているのは家業での10年の経験があるからだったんですね。この話は、表面と根っこがアンバランスであって丈夫な木が育たないという風にも解釈できると思いました。ほとんどの人は、すぐに表面に出ている枝の部分を求めてしまいがちですが、根っこの部分をしっかりと育てて土台を作ることが成功へとつながるのかもしれませんね。

・“切ったらかわいそう”は木を見て森を見ざるの話?
アルゼンチンでは農場を作るために広大な土地が切り開かれ、森林が伐採されているそうです。そのため、住む場所を失った野生のピューマが家畜を襲ったり、雨がふらなくなったりといった影響が出ているそうです。そして、一方の西畠さんはそのアルゼンチンにたった4本の木を採取しにやってきて、できるだけ木を傷めないように精魂込めて必死に日本に運んだそうです。

これらは対照的ですが、西畠さんは農場をつくる農家を批判しているわけではなく、どの命を奪うとかわいそうで、どれがかわいそうではないという話の難しさをこの話を一例にして語っています。アルゼンチンの農場で作られた野菜が口に入っている、自分が恩恵を受けている可能性もあるからです。誰もが動物や植物の命の犠牲の上で生きているのであり、それがまぎれもない人間の営みと西畠清順さんは書いています。

自分が恩恵を受けていることを忘れて、一つの事象だけを見て批判してしまうことってありますよね。木を見て森をみざる、その通りだと思います。ネットニュースやテレビでも切り取られた情報が多いので尚更そうなりがちなんだと思います。何事も狭く見ず広く見れるようになりたいですね。

“失敗は成功のもと”には、2種類の意味がある

ここでは、西畠清順さんが『課外授業 ようこそ先輩』という番組に出たときのエピソードが書かれています。様々なジャンルで活動する人が、自分の母校の小学校の生徒を対象に授業を行うというものだそうです。その番組で、畑に地植えされた子供たちの背丈ほどもある「お化け鶏頭」を掘り起こして、植木鉢に移植するというミッションを生徒にやってもらいました。

生徒にわざとやり方を教えず、考えて実践してもらったそうです。しかし、移植にはテクニックが必要で子どもたちの植え替えたお化け鶏頭は枯れかけてしまいました。なぜやり方を教えなかったのかというと、西畠清順さんは生徒たちに「どうやったらうまく育てられるか」ではなく、「自分が大事に思っている植物を枯らしてしまったときのショック」を伝えたかったと書いています。その後、正しい植え替えを教わった生徒たちは熱心に取り組んだそうです。

初めから丁寧に教えるのが効率的というわけではなく、自分で“絶対成功させてやる!”という気持ちのもとでの失敗から学ぶものは非常に大きいと書いています。

何度教えても覚えない、と思って諦めてしまうことってあるなと反省しました。失敗したことは中々忘れられないし、二度としたくないと思いますよね。子供に教えるという番組ですが、部下に物事を教えるときにもぜひ参考にしたいですね。

極端なことは、親切なこと

「この本を読んでくださっているあなたが、最後に見た植物は何でしょうか?思い出せますか。」話の最初にこう書かれています。思い浮かんだ方は少ないと思いますが、西畠清順さんもかつては植物に関心がある方ではなかったようです。植物を意識するようになったきっかけはネペンセス・ラジャという食虫植物に出会ってからだそうです。その植物を見たときそのインパクトとグロさ、人生で経験したことのないような存在感に驚いたそうです。そして、生まれて初めて植物に感動した瞬間だったそうです。

その極端な出会いがいつの間にか道端の草や、身近な草まで気になるようになり、気がつけばどんな植物も意識するようになっていったそうです。芸術鑑賞、スポーツ観戦でも同じで、圧倒的で極端にすごい例は、そのジャンルにまだ詳しくない人をその魅力の世界にいざなってくれる事がある、と書いています。

スポーツでスター選手が現れたり、将棋で若くて凄い棋士が出てきたり、それがきっかけで興味を持つことって結構ありますよね。そういう存在は私達にとってとても刺激的で、新たな世界へのきっかけになってくれています。魅力の世界へいざなってくれる極端なものを見逃さないように色々なものへのアンテナを常に張って生活していきたいですね。

・垣根を飛び越える、出会いの妙
タイトルの「出会いの妙」とは、いけばなの世界の言葉だそうです。「妙」とは「面白い」という意味で、いけばなを通じて本来なら出会うはずのない花や草木がひとつの器の中で出会い、面白い世界を創っているさまを「出会いの妙」と言うそうです。西畠清順さんプロデュース「代々木ヴィレッジ」の庭も出会うはずのない様々な国の木が植えられており、「出会いの妙」を体現しているかのようだと書いてあります。

生花の生まれた室町時代、今のような物流がなかった時代に表現できた「出会いの妙」は、現代では難しくなっています。そして、西畠清順さんは今の時代の「出会いの妙」とはジャンルを超えてコラボすることや出会うはずのなかった人同士がコラボすることなのかもしれないと書いています。

「代々木ヴィレッジ」では、様々な国の全く違う環境で暮らす植物が集まった庭だそうです。本書では生花とは違うと書いてありますが、規模の大きないけばなのようだと思いました。「出会いの妙」という言葉もすごく素敵な言葉ですね。今までいけばなだけで使われていた言葉が、形を変えて、西畠清順さんの思ってるように違うジャンルを結ぶ架け橋になったらさらに素敵だろと思います。

・温室で悩む前に、贅沢病だと思ってみる
苦労せずに育った人を「温室育ち」と表現しますが、植物も野生のものに比べ、温室で快適に育ったものは弱いそうです。例えば観葉植物のフィカス・ウンベラータも、もともとは西アフリカの灼熱のサバンナで育つタフな植物だそうですが、“温室育ち”した株は、急に屋外に出し、直射日光を浴びると葉にやけどをしてしまうことが多いそうです。しかし、そのまま屋外に置いておくと外の環境に対応し、陽に焼けることのない葉が育つそうです。そうやって植物は常に自分の育つ環境の変化に適応しようとすると書いています。

そして、西畠清順さんは最後にこう書いています。「人はそれぞれ成長の過程で色々な過程で色々な悩みに出くわします、そんなとき、今日も命がけで生きている野生植物のことを思い浮かべてください。きっと温室の中で悩んでいる自分が贅沢病だとわかると思います。」

この話の中に「植物は常に自分の育つ環境の変化に適応しようとする」とあります。温室育ちの植物でも、直射日光で葉が焼けても次の葉は直射日光に強いものが生えてくる。こんな植物のように、何かに悩んでも、それを解決したら次同じ悩みが来ても悩まない、強い心を持てたらいいですね。

植物は、優れたコミュニケーションツールである

マリーゴールドとトマトを一緒に植えると、マリーゴールドが害虫を遠ざけ、トマトの風味を良くしてくれる。このように近くに栽培するとこで、お互いが好影響を与え合う植物のことを「コンパニオンプランツ」と言うそうです。

ある時西畠清順さんは、小豆島町の役場から『二十四の瞳』で知られる壺井栄さんの生誕地を花畑に変えてほしいという依頼を受けたそうです。清順さんは色々考え、地元の人々が自由に花を持ち寄って世話ができるような仕組みとベースになる花壇をつくり「コミュニティーガーデン」にしたそうです。完成セレモニーにはお年寄りから子供までさまざまな人が集まり、相談しながら花を植え、みんなで会話に花を咲かせながら花壇を花でいっぱいにしていったそうです。

花壇を彩る植物は人間を癒やしてくれ、植物を人間が大切にお世話する、そして、植物を通して人間同士に交流が生まれる。まるで、植物と人間、人間と人間とが「コンパニオンプランツ」のように好影響を与え会う関係になっていると書いています。

植物を見ると心が穏やかになったり、癒やされるので家に観葉植物や、植木鉢を置いたりしますよね。それを人と人、人と植物をつなぐ形でコミュニティーガーデンを創った清順さんは本当に素敵だと思いました。それに、いがみ合ったりお互いを乏したりせず、人間も「コンパニオンプランツ」のようなお互いがお互いのためになる共生関係が築けるようになったらいいですね。

環境保全は、正義感より愛から始めよう

西畠清順さんは植物を扱う仕事柄「自然」や「環境」などというキーワードは避けて通れない話題だそうです。しかし、西畠清順さんは“自然や環境のことを思いやりましょう”という類の話はいわないと決めているそうです。なぜなら人類の歴史とは、自然を破壊し続けてきた歴史そのもので、自分の生活のすべてが、今までの人類の歩みの上に成り立っているからと書いています。

さらに人類が今まで行ってきた自然破壊に対して、自分は無関係であるという資格は誰にもないと西畠清順さん自身も思っているそうです。
さらに「“環境を守らなければ”という正義感や、“このままでは地球が危ない”という危機感を煽るだけで、本当に世界は変わるのでしょうか」と書いています。

たとえば目の前に困っている人がいて、その時“この人を助けなければ”という正義感で助けるのと、家族や恋人が困っていて、“愛する人を助けたい”という気持ちで助けるのとでは圧倒的に後者のほうが大きな力が動くはずと言っています。
結果的に自然を守りたいのであれば、その必要性を述べることより好きになってもらうこと、植物に対する愛情の量を増やすことだろうと書いています。

西畠清順さんの環境に関するこの話を読んで、今までの自分の自然保護や環境問題に関する考え方を改めたいと思いました。ニュースなどで報じられる自然破壊によって色々な問題が引き起こされている事実に危機感を覚えることはあっても行動を起こすことはありませんでしたし、その破壊が自分たちの生活のためにされていることは考えてはいませんでした。正義感だけで行動を起こすことは難しい、それなら愛情を増やす活動をしようという西畠清順さんの考えは私も見習いたいですし、愛情を持つためには植物自体をもっとよく知るべきだと感じました。

・足を使うことが、最高のプレゼンテーション
いけばなの世界では「足で生ける」という比較的新しく生まれた言葉があるそうです。
昔と違い今は物流が発達し、市場で様々な花が手に入るようになり、自分が生ける花を自分で探して摘んでくるということはなくなってしまったそうです。そんな昔では当たり前だった自分で野山を歩き、探すことが珍しくなった現代だからこそ「足で生ける」という言葉が生まれたのではないかと書いています。

西畠清順さんは世界中を歩きプラントハンターとして活躍していますが、「砂漠のバラ」と呼ばれるアデニウムを実際に見に行き、一面の砂漠で唯一眩しいほど鮮やかなピンクの花を咲かせるアデニウムを見たとき、飛行機に乗ってまで人々が見に来るバオバブの木を実際にマダガスカルで見たときにもその意味がわかったそうです。

誰かになにかの魅力を語るとき、本やインターネットで学んだことを伝えるのと、自分の足で行動し経験したことを伝えるのとでは相手への響き方に雲泥の差があると書いています。

百聞は一見にしかずという言葉がありますが、今では何でもインターネットで調べればわかることが多くて、実際に見に行くまではしないことも多いですよね。それでも、やっぱり実際に見にいってみた方が分かることも多くて、経験の大切さに気づくことがあると思います。実際に見て惚れた植物だからこそ説明に熱が入るとこの話で書いています。また、お客さんが植物を選ぶときにも現物を見てもらい、お客さんの足までも使うことがプレゼンテーションと書いています。仕事でも趣味でも誰かに魅力をちゃんと伝えるために足をつかうということは大切なのかもしれません。

・植物は、いかに隣にいるものを出し抜くかを常に考えて生きている
木々がせめぎ合うジャングルの中では、常に植物たちが日照権をめぐり競争をし、隣に自分より大きな木があると、その木に負けないように、我先に背を伸ばしていています。自然界では動物同士だけでなく植物同士も生存競争を繰り返しているそうです。一方、人間社会の「ゆとり教育」など競争や順位をなくそうという発想は、子どもたちから競争心を奪い、私達人間が持っているはずの“野生”を失わせてしまい、自然に逆らう行為なのではないかと書いています。

また、木同士は日々競争していても、互いにぶつかりあうことなく、それぞれの枝を避けて日光を求め上に伸びるそうです。生物が何億年も繰り返してきた生存競争を考えてみれば、教育のあり方も自ずと答えが出ていたのではないかとも書いています。

西畠清順さんはこの話で競争をなくそうという考えが私達の“野生”を失わせてしまうと書いています。確かに競争があることでやる気につながることは多くあると思います。それをわざわざ無くしてしまうというのは問題な事かもしれません。ただ、過度な競争をさせるということではなく、西畠清順さんが書いている通り、植物のようにお互いがぶつかりあうことなく、傷つけあうことなく上を目指して枝を伸ばせるような教育環境ができるといいですね。

・桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿、桜知らぬ馬鹿
「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」とは「枝を切られると弱ってしまう桜を剪定し、枝を切らないと実がなりにくくなる梅を剪定しない人」から転じて“余計なことばかりして、肝心なことをしない人”を表す比喩だそうです。しかし、桜も種類によっては剪定しても弱らず枝が伸びてくる種もあるそうで、“桜を切ると弱る”というのは案外視野の狭い見方だと言っています。

誰かに対して、「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」と思っても、まずは自分の知識や見識が、それを相手方に言えるだけの背景があるかどうか自分に問いかけてみた方がいいと書いています。そうでないと「桜知らぬ馬鹿」になってしまうのではと西畠清順さんは言っています。

「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」この言葉に当てはまる人を考えてみると数人頭に浮かんできました。でも、もしその人が余計なことをしていると思っていても、本当は重要なことかもしれないですね。自分の知識の中だけで判断すると間違った見方をしてしまうことがあるかもしません。

街路樹がその街の豊かさを物語る

シンガポールでは国策として国土を緑で覆うことに尽力しており、チャンギ国際空港は、いたるところに熱帯植物が植えられていて植物園のようだそうです。また、街を歩けば日陰を作るように世界中の木がたくさん植えられているそうです。これは、シンガポール初の首相リー・クアンユーによる息の長い取り組みによって成されたことだそうです。

日本では行政が緑被率を条例などで設定し緑化に取り組んでいるそうです。しかし大切なのは緑“視”率だと清順さんは書いています。木がある意味がないほど剪定された公園の木や街路樹などを見かけますが、設計時に、図面で緑被率を何%確保しても、実際管理する業者の剪定の仕方でその緑量は劇的に変わってしまうそうです。一方アメリカのオレゴン州ポートランドの街路樹や公園の木は自然の形のままに枝がのびのびと育ち、森の中を歩いているかのようだそうです。また、定期的にボランティアが落ち葉や枯れ枝を掃除していて、街の住人にとっても街の木は“私達の木“という認識だそうです。日本では自分たちのものと認識している人が少なく、この意識の違いが緑視率として表れているのではないかと西畠さんは書いています。

一人ひとりが、街の緑を思いやり、自分のものだと思うこと、そして息の長い取り組みが大切だと書いています。

西畠清順さん自身も「代々木ヴィレッジ」でポートランドと同様に、テナントで働く人とボランティアで定期的な季節の花の入れ替えや簡単なメンテナンスを行っていて、近所の人にとっても身近な庭になっているそうです。また、その「代々木ヴィレッジ」を未来の街のあり方のプレゼンテーションと書いています。この取り組みが普通の街でも取り入れられたら形だけの緑被率を制定するよりもより良い街ができると思います。本当に未来の街がポートランドや代々木ヴィレッジのように豊かな街になってほしいです。

また、日本人にとって春夏秋冬、美しい四季の移ろいは当たり前の一年のサイクルですが、熱帯のジャングルの草花は年中休むことなく成長し続け、砂漠の草花はずっと雨を待ち、雨が降ると何万という草花を一斉に芽吹かせるそうです。高山の植物は、厳しい寒さや日光から身を守るために全身に毛を生やすこともあるそうです。西畠清順さんは、世界を旅するほど様々なことを知り、逆に祖国のことによく気付かされると書いています。

つい日常的に起きていることが世の中の常識だと思いがちですが、世界を見渡すような広い視点で見たとき、自分が当たり前だと思っている常識は、世界には億万通りもあることを旅は教えてくれると書いています。

この話で、『毎朝電車に乗ることが常識だと思っている日本人ビジネスパーソンもいれば、100頭のラクダに「今日はどこの草を食べさせようか」と考えるのが毎日の常識だと思っているモロッコ人ラクダ使いもいます。』と書いています。自分の生活の中だけがすべてだと思いがちですが、様々な世界を知ることで心にゆとりができたり、新しい世界へ飛び出す勇気が出たりするかもしれませんね。

・時には電動歯ブラシみたいな体験も
普段の歯ブラシで十分にコトは足りているので、自分の人生にとって欠かせないものではないけれど、電動歯ブラシを使ってみたら使ってみたで、“ああ、なるほど。こういう世界もあるのか”という経験になるとここでは書いています。それは、海外のガーデンショーを視察すること、動物園の飼育員さんの話を聞くこと、植物のバイオテクノロジーの本を読んでみることといった経験も電動歯ブラシに似ていて、新しい発見や自分のやっていることを客観視できることがあると書いています。

毎日の仕事に熱中しすぎてしまうと、自分の世界だけに一点集中し、それをどれだけ掘り下げられるかにすべてを費やしてしまい、その結果それ以外のことに興味が湧かなくなったり、視野を狭めてしまう可能性がある。だからたまに気分を変えて“電動歯ブラシ的なこと”をやってみると役に立つこともあるとも書いています。

電動歯ブラシというたとえ、すごく清順さんらしくて素敵です。確かに普通の歯ブラシで十分ですが、使ってみると手が疲れなかったり、細かいところまで磨けたりする発見があります。そういうふうにいつもの自分ではやらないであろうことに興味を持ってやってみることは気分転換にもなりますよね。同じことばかりずっとやっていると煮詰まってしまうときには西畠清順さんのように何か刺激を受けるような体験や、いつもとは違ったことをしてみるといいかもしれませんね。

植物は知るが安全

食品の流通とは違い、園芸市場の流通に乗った植物には、残留農薬を規制する明確な基準がないそうです。そのため花屋さんで買ったハーブの苗を料理で使うことが安全だとは限らないわけです。また、見栄えのするように植物の成長をコントロールする矮化剤という人体に悪影響を及ぼす可能性のある農薬や殺虫剤も使われている植物もあるそうです。

「人に管理されている植物の悪口を書きたいのではありません。植物を愛しているからこそ、正しい付き合い方やリスクを知ってほしいのです。」と書いています。そして「虫食いの形跡があるくらいの有機野菜のほうがよっぽど愛おしい。そんな、野菜の世界では当たり前の視点を、そろそろ花卉園芸業界にも向けてみたいものです。」とも書いています。

園芸用植物には残留農薬を規制する基準がないというのには驚きました。私の家にも母が育てているオリーブがあるので少し心配です。植物の成長をコントロールする農薬や他にもクローンの苗、メリクロン苗というものが多く出回っているそうです。見た目だけの美しさにこだわりすぎて、植物の個性や自然そのものの美しさを忘れてしまうのは悲しいことですね。野菜だけでなく、有機観葉植物も広まって欲しいですね。

・オーガニック=異なった要素が集合しひとつのものを形成していること
西畠清順さんは、JR大崎駅周辺に約3ヘクタールのガーデンシティを作るという東京都内最大規模の再開発プロジェクトの植栽計画担当として携わっているそうです。「オーガニックシティ」というコンセプトで、常日頃からハイ・テクノロジーばかりが先行する時代に、逆にオーガニック(有機的)な思考を持ちつづけることの大切さを思っていた西畠清順さんにとって、大都会にできる新しい町を緑あふれる有機的な街にするこのプロジェクトはいい機会になったそうです。

「有機的」(オーガニック)とは「様々な要素が集合し、それぞれがオーガナイズされてひとつのものをけいせいしている」という意味だそうです。そこで、そのプロジェクトでは、街がまるでひとつの生き物のようにある“社会有機体説”という論理だけでなく、実際に緑の多さやその見え方、植栽計画のコンセプトまで追求したそうです。

そして、広大な敷地に個性の違う7つのコンセプトガーデンを配置したそうです。また、街路樹には、道路脇を歩く人が道路横のガーデンを歩く気分でいてほしいという願いから、わざと違う種類の木をまぜて配したそうです。結果的に日本特有の画一的な街路樹と違い、街路樹が必ず同じ大きさで同じ種類でなくてはならないという偏見を覆す「オーガニックシティ」という考え方の象徴となったと書いています。
この話で “人と自然の共存”という言葉がさかんにささやかれている一方で街に直線で線を引き、同じ木を同じ感覚で同じように切り揃えて植えている行為そのものの不自然さと、本来、自然の一部なのに、わざわざ不自然なことを行い“人と自然の共存”を口にすることについて問いかけています。

人と自然との共存と言いつつ街に植えられている木は確かに、均一に切り揃えられ、本来の自然らしさのないものが多いですね。公園ですら自然を思わせるものが少ないですよね。このプロジェクトでは、7つのコンセプトガーデンを配置したとありますが、見事に咲き誇る桜の見られる「チェリープロムナード」や、四季によって色彩を変える「カラフルガーデン」、食べられる実のなる木をあつめた「エディブルパーク」などがあるそうです。想像するだけで、美しく自然豊かなガーデンを想像できますね。西畠清順さんの携わっているオーガニックシティの完成が楽しみですし、このような地域のコミュニティーガーデンが増えてくれればいいと思います。

植物とロマンと、ときどきお金

清順さんは常日頃から、どうやったら人に植物の面白さを伝えられるかとあらゆる方法を考えているそうですが、そのひとつとしてお金の話をするという手段が効果的だったそうです。西畠清順さんが、子どもたちに植物の魅力を伝えるために実際試みた実験が、その手段の効果を実証してくれました。まず、子どもたちにある種のサンスベリアを見せ、マイナスイオンが出たり消臭効果があったりなど、ありがちな説明をしたそうです。そうすると「へーえ」と子どもたちは少し興味を持ってくれました。

続けて、アフリカの砂漠から来て、1ヶ月に一回水をあげれば生きていけるくらい強い植物だと説明したそうです。そして、最後に「ちなみに、この植物は100万円くらいするよ」と言うと、子どもたちは「え~!!!!」と驚き、表情やリアクションは最初とは歴然の差だったそうです。この話から分かるのは誰でも心の奥底に常にお金という物差しがあるということで、あえて生々しいお金の話をすることで人の興味を引く手段のひとつとして使っているそうです。なぜなら、目の前に100万円の植物を持ってきて「プラントハンターには一攫千金のロマンがあるんだぞ」ということと一緒に「そこにはあなたの知らない世界があるんだぞ」ということにも気づいてもらうほうがよっぽど学びになると思っているからと書いています。

自分が魅力的と思うことに興味を持ってもらうためには、相手の興味のある話をしなくてはいけませんよね。そんなとき、やっぱりお金は誰でも関心のあることですよね。西畠清順さんは前の話で極端な出会いは新しい世界へ誘ってくれる事があると書いていますが、これもひとつの極端な出会いだと思います。100万円もする高価な植物があって、それを採ってくることができれば、一攫千金のチャンスがある、この極端な出会いが知らない世界への一歩になるかもしれません。相手に素敵な世界を知ってもらいたいときに、極端な出会いとしてお金の話をするのもいいかもしれませんね。

・植物は、自分の周りにいるものをいかにうまく利用するかを考えて生きている
植物は花に香りをもたせたり蜜を出したりして、虫をおびき寄せ受粉しやすいようにしたりして、植物は自分の周りにいるものをいかにうまく利用するかを考えて生きているそうです。しかし、植物は決して自分だけが得をしようとするわけでなく、鳥や動物、虫たちに食料を提供したり、住処を提供してあげたりして、持ちつ持たれつの関係を本能レベルで作り出していると書いています。そして、植物は他者にメリットを与えることが自分のためになること、お互いにいい関係を末永く続けることができることを身をもって証明してくれていると西畠清順さんは書いています。

前の話にコンパニオンプランツという言葉が出てきましたが、植物の自然との関係の築き方は、私達人間関係の築き方でも参考になることが多いですね。見返りをもとめて何かをするということはあると思いますが、植物のように自分のためにしたことが、他人のためになり、それによっていい関係を築けるようになったらいいですよね。

最後に

西畠清順さんは、人は人生において何かにモノゴコロがついたときに、また新しい世界に行けるものだと思うと書いています。ここでいうモノゴコロとは、最初の話、“念ずれば花開く”のように物事の本当の意味に気づいた時のことを西畠さん言っています。そして西畠清順さんが植物にモノゴコロついた21歳の時から、どっぷりと植物の世界に浸かり、日々植物を追いかけ、たくさん学び、経験したことをこの本に書いているそうです。

そんな植物をずっと追いかけてきた西畠清順さんが、ただ一つだけ言えることとして、こう書いています。「誰もが、みんな植物あってこそ存在しているということ。もし、辛いことがあったり、何を信じていいかわからなくなったりしても植物だけは信じていいのです。植物は文化のもとであり、宗教のもとであり、生命のもとである。」

今の座右の銘は”人生、植物ありき。僕もあなたも”だそうです。毎日夢中で探し求めているものや伝えたかったことは、植物そのものだけではなく、その道中で気づく大切な何かだということを植物は教えてくれたと書いています。

西畠清順さんのモノゴコロという解釈はとても素敵だなと思います。大人でも老人になっても、何かにモノゴコロつくことができるというのはまだ見つけていな可能性があって、どんな歳でも挑戦できるという希望が持てる言葉だと感じました。今からでも、モノゴコロが付けば素敵な世界への扉が開けるかもしれませんね。そして、様々な経験や学びから、新しい発見や人生についても考えが変わるような体験ができるかもしれません。

これまで読んできた話が全て、西畠清順さんの経験から書かれていると書いてありますが、読んでいてもわかりました。そして、そのひとつひとつを読んで私も色々なことに気づくことがありました。これも、西畠清順さんが言う通り植物が文化や生命のもとにあって私達の身近にあるものだからだと思います。私達の生活は昔のように植物を身近に感じることは少なくなってしまったかもしれませんが、この本を読んで日々の生活の中で植物を少しでも意識するようになるだけで植物との距離感は縮まると思います。

そうすれば植物の強さ、ありがたさを感じることができるはずです。この本は植物への知識だけじゃなく、西畠清順さんの思いや、植物に対する考え方、そして植物以外に自分自身のあり方について色々とためになる話が多く内容の濃い本でした。西畠清順さんのさらなる活躍を願わずにはいられない素敵な本です。

今後も様々なプランハンターに書籍のレビューを上げていく予定(やるのかどうかは未定ですが汗)ですので、お楽しみに。

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